433人が本棚に入れています
本棚に追加
……結婚……
その二文字がコトコトと音を立てて転がる。
「結婚なんて私はまだ……」
私が言いかけると、
「こいつ? 無理無理」
碧斗が私の言葉を無視するように遮った。
「だってコイツ、救いようのないダメ男と付き合ってるし」
碧斗っていう男は、本当に女心がわかっていない。
だから私は時折本当に不思議に思うのだ。
女心がわからないのにどうしてこの業界で成功しているのかと。
しかし、ひとたび会議ともなれば、ブライダルの主人公ともいえる花嫁の気持ちを一番重視しているのは碧斗なのだ。
あの時の碧斗はほんの少し神がかっている。
女の私でさえ気が付かないような些細なことにも気付くことができるのだ。
それなのに……
私は腕を組んで首を捻る。
最初のコメントを投稿しよう!