魅惑のデザート

9/30
前へ
/30ページ
次へ
細い糸のような飴細工の綿毛がココット皿を覆い、その細かい網目の隙間から苺が覗いている。 プレートに描かれた苺ソースの模様は繊細でプレートの白と苺の赤のコントラストがまさに芸術だった。 「そうそう、そういう反応。嬉しいなぁ。苺のブリュレだよ」 「もう苺のシーズンは終わったって思ってたのに……うれしいです」 「その反応、ますますうれしいな。契約農家でわざと時期をずらして作ってもらってる苺なんだよ」 「へえ……そうなんですね。これは……食べるのがもったいないですね」 すると、彼は笑った。 「そう言わずに食べて、食べて。小柳さんて、苺、好きだったでしょう?」 「……え? どうして……。私、副社長にそんなこと言ってましたか?」 「いや、残念だけど、碧斗情報」 「社長の……?」 「そう」と、彼は碧斗を横目に見た後、すぐに視線を私に戻した。 「子供の頃はいちご狩りによく行って、行くたびに食べすぎでお腹壊してたとか」
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

433人が本棚に入れています
本棚に追加