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「な、芹香。いい化粧品があるんだけど買わねえ?」
「え?」
私にそれ以外の言葉があっただろうか。
碧斗と一緒にいるときも度々こんなことがあるけれど、碧斗の時とは全く違う。
私は思い切り眉間を寄せた。
「智、何言ってるの?」
「いい化粧品なんだって。芹香なら特別に40パーセントOFFにまでできるよ」
「……化粧品て……何で智がそんなこと言うの? ……もしかして、バイトってそれのこと?」
「そ。今日、早速一セット売れちゃって、これがその報酬」
智はくたくたになった二つ折りの財布を取り出して中からお札を数枚取り出した。
一万円を含めて千円札が数枚。
「一セット売ってって……」
私の思考が追い付かないうちに話を進めてしまう彼に、ますます私の思考は置いて行かれる。
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