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「……芹」
「……芹香」
彼は何度が私に呼び掛けていたらしい。
私がはっとして顔を上げると、智は懇願するように上目遣いで私を見ていた。
「な、すぐに返すから。芹香が応援してくれたら俺、今度こそマジで頑張れそうだから」
ずっと……応援してきたんだよ。
私は心の中で呟きながら、身体の中で何かがひやりと冷めていくのを感じていた。
「……智。清潔感て、着てるものが新しいかどうかじゃないと思うけど」
「何? どういうこと?」
「清潔感とか、そういう人に与える印象って、その人本人から滲み出るものだと思うよ。それに、私、前にもスーツ、買ってあげたことあったでしょ? あれ、ほとんど着てないんじゃない? 私……智が着てるの、ほとんど見たことないから」
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