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少し嫌味になってしまったかもしれないが、口が滑ったというよりは、言わずにはいられなかった。
「あ、ああ。あれ。あれさ、あの後すぐに仕事辞めちゃったし、ちょうど困ってる友達にあげたんだよね。言ってなかったっけ? ごめん、芹香」
「すぐにあげちゃった? 聞いてないよ。あの時のお金だって返してもらってないのに、あげちゃったの? 私、智を応援するつもりで買ったんだよ?」
身を乗り出した拍子にビールのグラスに肘が当たってこぼしそうになった。
「ごめんて。でも困ってる友達、ほっとけないだろ?」
「そうだけど、智にスーツを友達にあげる余裕なんてあるの? その時だって、仕事辞めちゃった後だったんでしょ?」
予想もしなかった答えと全く悪びれる様子のない彼に、沸々と胸の奥に沸き立つ熱が握った拳に汗を滲ませた。
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