彼の弱点

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――――――― ――――― ――― 「遅くなってごめんっ」 智の隣の席で半分もたれるようにして椅子を引いた。 急いで来たので息は切れて肩からはバッグの紐がずれ落ちる。 「……そんなのいいよ。仕事なんだから」 彼が振り向きざまに見せた笑顔に、私はほんの一瞬表情を固めた。 「ホントにごめんね」 椅子に腰を下ろしながら彼から目を背けてしまった。 彼が笑顔の前に見せた顔が、その後の笑顔よりも私には鮮明に映った。 もちろん、彼は私にそんな表情を見せたつもりはないだろう。 私を振り向くまでのわずかな間に無意識に表れた表情だと言ってもいい。 不満を滲ませ、苛立ちが彼の口角を引き攣らせていた。 こんな顔、 今までしたことなかったのに……
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