デザートの余韻

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しばらくして彼が着替えを済ませて現れた。 「ごめん、お待たせ」 私は壁に寄り掛かっていた身体を起こして直立した。 「……あ、私服ですね」 見慣れない彼の私服姿に思わずどうでもいい言葉を口にしてしまった。 「コックコートで帰るわけにいかないだろ?」 「そうですよね」 そう答えるしなかったので返事をすると、彼は「行こうか」と、廊下の端から反対方向へ歩き出した。 廊下を進むと二人の靴音が狭い廊下によく響く。 「誰もいないと静かだよね」 「ホントですね」 廊下を進み、従業員通用口まで来ると彼がドアノブに手を掛けたまま立ち止まる。 「どうか……なさいましたか?」 「ん……帰るって決めたらちょっと惜しくなっちゃって」 「惜しくなった?」 「小柳さんと二人なんて初めてじゃん? いつも碧斗が一緒だし」
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