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「ご馳走さまでした」
私は空になった食器を前に手を合わせた。
「ご馳走さまはまだ早いよ」
小野田さんはテーブルの上の食器をすべり取るように滑らかな手つきであっという間に自分の手の中に納めた。
「今日のメインがまだあるんだから。お腹は大丈夫?」
「あ、はい。全く問題ないです。あの、何かお手伝いしましょうか?」
「いや、大丈夫」
彼は私を残して一度厨房に入った。
金属性の高い音が小さいながらここまで響いてくる。
その音を聞くだけで胸が高鳴るのは彼の作るデザートへの期待が高いからに違いない。
私はテーブルの中央にある生花の中で、短く切られたピングの薔薇の花びらを見つめていた。
「どうしたの? ぼんやりして」
顔を上げると彼は厨房を出たばかりの少し離れた位置から私に呼び掛けていた。
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