二人の生活

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「あ、いえ……もう少しであがろうと思うんですが」 『ってことは、まだ会社? 碧斗も一緒?』 「いえ、社長は外出されて、今日は……」 「今日は?」 『直帰する』というのがふさわしいのかどうか思い悩み、少し躊躇してしまった。 「直帰する予定です」 『そっか、ならちょうどいい。これから夕飯一緒にどうかな?』 「夕食ですか……」 『無理?』 「あ、いえ。そういうわけじゃないんですけど……少し早めに帰らないと」 『何か……あるの? あ、いや、ごめん、変な詮索して』 彼は私に聞くとすぐに謝り、 『少しなら……大丈夫かな?』 と、懇願するように尋ねた。 甘い声色でこの台詞はずるいというものだ。
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