480人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
「あ、いえ……もう少しであがろうと思うんですが」
『ってことは、まだ会社? 碧斗も一緒?』
「いえ、社長は外出されて、今日は……」
「今日は?」
『直帰する』というのがふさわしいのかどうか思い悩み、少し躊躇してしまった。
「直帰する予定です」
『そっか、ならちょうどいい。これから夕飯一緒にどうかな?』
「夕食ですか……」
『無理?』
「あ、いえ。そういうわけじゃないんですけど……少し早めに帰らないと」
『何か……あるの? あ、いや、ごめん、変な詮索して』
彼は私に聞くとすぐに謝り、
『少しなら……大丈夫かな?』
と、懇願するように尋ねた。
甘い声色でこの台詞はずるいというものだ。
最初のコメントを投稿しよう!