弱点

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そして、その蒼白い顔面の中で口角だけが吊り上がる。 「仕事中は『社長』って言っただろ?」 その瞬間、思わぬ錯覚を起こした。 甘えん坊だった碧斗がいたずらを覚え始めた頃の幼い笑顔が この憎たらしい不敵な笑みに重なる。 「社長……何をやってるんですか?」 強張っていた身体から力が抜けて肩が落ちる。 「ほら、お前、暗いとこ苦手じゃん? ビビるかなーと思って」 「……び、びびりませんよ、こんなことで。そんなくだらないことで脅かさないでください。急がないとレストランの方、間に合いませんよ?」 「ビビってるくせに。ガキ」 「ガキ!? 私の方が年上なんですけど!」 「ああ、そうだった。暗いからわかんなかったわ。年とったら暗いところにいた方が得するんじゃねーの?」 「どういう意味ですか!!」
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