第二話 骨まで愛して

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        1  寒さが身に染みてくる季節。寒風が吹くたび、木々がざわざわと騒ぎ出す。夜の帳が下りたこの時刻に、その音は恐怖心をあおるもの以外何でもない。しかも周りは街灯も少なく、月明かりだけが頼りだった。  目の前には洋館が建っていた。その不気味な存在感に誰もが足をすくませるだろう。洋館の周りは高い鉄柵で囲われており、まるで来るものを拒むかのようだった。  そんな洋館を眺める三人の人影があった。ただ無言で眺める姿にはどこか怯えが見える。その三人は高校生ぐらいの若者で二人は男の子、一人は女の子という組み合わせだった。女の子は寒そうに首元を押さえている。そこで一人の男の子がようやく声を発する。 「どうする?」 「どうするって……ここまで来たら入るしかないんじゃね?」 「まぁ、確かにな。ビビって逃げたなんて噂が広まれば笑いものだしな」 「えぇっ、やっぱり帰ろうよ」と女の子は不安そうだ。  この洋館は近所でも有名な心霊スポットだった。人がいないのに話し声が聞こえたり、窓に火の玉や人影が写ることもあるらしい。心霊話には事欠かない最凶スポットなのである。そこはお金持ちのお婆さんが昔住んでいたらしいが、そのお婆さんが亡くなってからは放置されたままだった。荒れ果てる一方の洋館は、どうやら霊のたまり場になっているようだ。  今回この季節外れの肝試しを行うことになったのは、一人の男の子お調子者の前田のせいだった。友達との会話の中この洋館の話になり、俺なら怖がらずに行けると見栄を張ったそう。だがその結果、行って中の様子を写真に撮ってくるように言われたそうだ。そこで正直に無理と言えばよかったものの、引っ込みがつかなくなり今に至るというわけだ。そしてそんなバカに巻き込まれたのが、前田の幼馴染みの河合と唯一の女の子の秋野だった。  三人は洋館を目の前にして、恐怖からか行くのをためらっている。行くか帰るか、誰かが何か言わない限り動きそうになかった。すると、 「行こう!」
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