第二話 骨まで愛して

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       5  住宅街の一角。そこは古い建物が多く残っている場所だった。消えた男性が住んでいたであろうアパートも、もちろんこの中にある。メモに書いてある住所を頼りに、そのアパートを探す。アパートの名はかがやき荘というそうだ。古いアパートでその名前は、もはや哀愁しか感じない。  学校終わりにすぐシキと合流した結。二人は今メモをちらちら見ながら、目的のアパートを探していた。入り組んだ道に悪戦苦闘しながら探すこと三十分。ようやく、かがやき荘を見つけることが出来た。思っていた通りの外観で、築三十年は優に超えているだろう。昔ながらの二階建てアパートが二人の目の前にあった。 「どうしましょうか?」 「う~ん。大家さんに尋ねるか、住んでいる人に聞いてみるしかないよね」 「男性のこと、覚えている人がいればいいんですけど……」  二人があれこれ作戦を立てているとき、一人の男性が二階のアパートの部屋から出てきた。年はシキと同じぐらいの二十代半ばぐらいだろうか。探している男性、しゅんぷうさんは少なくとも二年前まではここに住んでいたはずだ。だが、最近はご近所づきあいがかなり減っている。結にはそれが一番の気がかりではあった。都会になるともう、隣の人のことさえも知らないのが当たり前の時代なのだ。  しかし何か当てがあるわけでもない今は、とにかく手当たり次第で聞いてみるしかない。シキは人当たりのよさそうな笑顔で、その男性に近づいていった。 「すみません、少しお話いいですか?」 「勧誘とかだったらお断りだよ。それにあまり時間無いんだ」 「お手間は取らせません。私たちは、ある人を探しているんです。二年前までここのアパートに住んでいたと思われるんです。失礼ですが、あなたはここに住んで何年になりますか?」 「えっと、もう五年近いかな」 「それなら知っている可能性がありますね」  それに対して男性は渋い顔をする。結の心配事は的中したようで、このアパートでもご近所づきあいは皆無のようだ。ここはもう奇跡が起きることを願うしかなかった。
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