第二話 骨まで愛して

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 シキはあきらめることはせず、一応男性にしゅんぷうさんの情報を聞かせる。まだ話を聞いたのは一人目なので、シキ自身あまり期待していないのが傍から見てもわかる。 「探しているのは男性なんです。○○建設という会社に就職していたんですが、パワハラが原因で辞めてしまって。それからはアルバイトを転々としていたようです。お心当たりはあありませんか?」 「二年前まで居たんだよね?う~ん……」  悩ましい顔の男性。考えてはくれているのでありがたいが、その様子からいい答えが聞けそうには思えなかった。結の顔が次第に落胆顔になる。それでもあきらめきれなかったのか、結はふと思い出した情報を男性に聞かせてみた。 「あの、その男性、福井県出身だと思われるんですが」  いきなりの結の発言に驚く男性。青年と女子高生の組み合わせに今頃気づいたのか、二人に怪しいものを見るような目を向ける。それでも住人の男性は二人に詳しいことを聞くことなく、考えてくれているようなそぶりを見せてくれた。きっと面倒ごとに巻き込まれたくないとでも思ったのかもしれない。すると、男性の口から思いもよらぬ情報がもたらされる。 「その福井県出身で思い出したよ。一人心当たりがあるんだ。その人も二年前ぐらい前にここを出ていったから、もしかしたらあんたたちが探している人かもしれない。俺も福井県出身なんだよ。だから他の人よりも話をしたし、一緒に飲みに行ったこともあるよ」  それに目を丸くしたのは結だった。ユウと調べていたとき、こんな情報役に立つのだろうかと思っていたのだ。それが本当に役に立った。世の中には無駄な情報など無いのかもしれないと思ってしまう結。シキの方を見ると、彼もびっくりした様子だった。  ただいつまでもびっくりしているわけにはいかない。ハッと我に返り、シキはさらに詳しいことを聞こうと男性に質問する。それでも声は興奮気味なのが隠しきれていなかった。少々前のめりなシキに、男性は戸惑いながらもちゃんと答えてくれた。 「その人が今どこにいるかわかりますか?今何をしているかでもいいんですけど」
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