第二話 骨まで愛して

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 シキは満面の笑みでそう締めくくると、視線を幸子に移した。幸子はというと、ここでようやく口を開いた。笑みは消え失せ、真顔の幸子がそこにいた。 「あなたを一生許さない。もし警察が裁かなかったら、私が代わりにあなたを裁く。あなたの大事な家族も含めてね」 「う、うわぁ~!」  風間は大きな悲鳴を上げながら、自分の家に駆け込んでいった。家のどこかで怯え、丸まっている姿が目に浮かぶ。  そんな風間を見送った三人は、もう用はないというようにその場を後にした。お灸は十分に据えれただろう。自分たちが出来るのはここまで、あとは警察に任せるしかない。風間はどうするのだろうか。とてもじゃないが自首するとは思えない。そのことは辛いが、この帰りの道中が大いに盛り上がったのは言うまでもない。 「はぁ~スッキリしました。本当にありがとうございました」 「でも、結果としては最悪だったと思うんですけど?」と申し訳なさそうな結。 「確かにそうでしたけど、こうして復讐できましたし」  スッキリした笑顔を向ける幸子に、二人はもう笑うしかなかった。確かにあのときの幸子は怖かった。幽霊の恐ろしさ満点だった。きっと、怖いものが苦手な人だったら気絶していただろう。幽霊を見慣れている結でさえも怖かったのだから。  幸子はルンルン気分なのかスキップなんかしている。先を行く彼女の背中を見つめる二人。彼女が傷ついていないのが救いだった。いや、傷ついていないことは絶対に無いだろう。きっと辛いはずだが、それでも彼女は前を向いている。振り向いた幸子の笑顔は美しく、それが次の言葉に表れていた。 「私、このことを良いように考えようと思ったんです。あんなクズ男と心中しなくてよかったって。ネガティブな私にしては上出来でしょ。結ちゃん、そう思いませんか?」 「えぇ、確かにそうですね」 「でしょ。だから私、今度生まれ変わったらちゃんと生きようと思います。だって死んだらおしまいですから。幽霊になって、それが本当に良く分かりました。でも、生まれ変わった時にはこの記憶は無いんですよねぇ。それが残念です」  すると、幸子の姿が薄らぎ始めた。彼女の未練が無くなったからだろう。次第に薄くなっていく体。少し寂しそうな顔をする幸子は、二人に向かって言う。
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