俺と美麗様とローストビーフと。

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あのスープは絶品だ。 今日の売れ行きからすると、もう一度メニューに並ぶとは考えにくい。 それなら最後にまたあのスープを味わいたい―― 「すみません。限定5食のコース料理はまだありますか?」 黒板のメニューを指差しながら、カウンター席で1人座る女性がフレンチコースを注文する。 「大丈夫ですよ。まだあります」 というより、まだ1つも出てないけれど。 「じゃあ、コースください」 ニッコリ微笑む姿に思わずドキリとした。 1人で来られたこの女性はとても綺麗だった。 正直、美麗さんと負けず劣らずの美しさで、男なら誰もがこの笑顔の虜になるだろう。 きっと年齢も俺より少し上くらいで、これもまた美麗さんと同じくらいだろうか。 ――といっても、美麗さんの年齢は知らないけれど。 「ほら、ボーッとしてないでさっさとオーダー通しなさいよ。コース入ったんでしょ」 カウンターには微笑む美女。 キッチンには舌打ちする美女。 同じ美女でもイメージは大きく違う。
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