俺と美麗様とローストビーフと。

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その様子を見て、俺は助けを求めるのをあきらめる。 そりゃそうだよな。 レシピ教えろなんていうお客さん、適当にあしらえってことだ。 「作り方は教えられないですけど、そこまで美味しいと思っていただけたなら嬉しいです」 ふっ。俺って、大人な対応―― 「ローストビーフの作り方、教えてあげてもいいわよ」 美麗さんは俺の前にぶりの照り焼きが置きながら、美女に話しかける。 確か、ぶりはカウンター奥2番目のお客さんのオーダーだ。 仕事しろってことね。 俺はちゃんとお客さんに料理を提供しながら、美麗さんと美女の様子を気にしていた。 「本当!教えてくださるんですか?」 「良い女に二言はないわ。教えてあげる。 でも、ギブアンドテイクよ」 「もちろんです。教えていただけるなら何でもします。」 「なんでも、ねぇ」 そう言いながら、美麗さんはあごに手を当てて何かを考えていた。 美麗さんのことだ。 “何でもする”に対してとんでもなくドエスなことを考えているに違いない。
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