俺と美麗様とローストビーフと。

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美麗さんは数秒、無言で考えた後に口をひらく。 「こんなわけわからない私みたいな女に何でもするって言っちゃうくらいの、何か理由でもあるの?」 ……美麗さん、わけがわからない女だって自分で認識してたんだ。 「といっても、まだ営業中だし、今日は24時には片付けも終わるからそれから話は聞くわ。 とりあえずコース料理もまだ残ってるしね」 そう言って美麗さんはキッチンに向かって料理をはじめた。 結局、美麗さんは何を考えたのかを言うこともなく。 そして、この1食以上にフレンチが売れることもなく、その日の営業は終了した。 *** 「やっぱりフレンチは合わないのかしらね。よく考えたらワインも置いてないし」 美麗さんが不機嫌そうに呟くのを聞きながら閉店後の片付けをする。 せっかく美味しいのに勿体無いとは思うけれど、余ったものは持ち帰りOKなので俺としては嬉しい。 お気に入りのじゃがいもの冷製スープだって片づけが終わってから飲ませてもらうつもりだ。 「で。さっきの女は来ないかしらね?」 壁にかけてある時計を確認すると時刻は23時50分。 これから店に来て料理を教わる、となると確実に終電はなくなる。 「どうでしょう?でも、時間もかなり遅いですしね」 と俺が答えた時に、店の扉が開かれた。
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