夜ぞふけにける

10/10
前へ
/10ページ
次へ
「――お前のコト」  一瞬足を止めて、射抜くように俺を見つめて、祐志が言う。  その瞬間。時間も呼吸も止まって、さっきのなんか足元にも及ばない程、顔が熱を発した。 「お前は、何話してたの?」  再び歩き出した祐志は、のんびりと訊いてくる。 「……姉貴の、こと、だけど」  まだドキドキして、上手く答えられない。そんな事も知らずに「ふーん」と返してきた祐志は、俺を見て微笑んだ。 「似た者姉弟じゃん」 「……嬉しくねぇー」  空を仰いで嘆息する。  しかし見上げた夜空は、思った以上に星が瞬いていた。 「……うわっ、きれー……」  俺の呟きに、祐志も顔を上げて微笑む。  俺達は夜空を見上げながら、2人でゆっくりと進んだ。  ――結局。その後は花火に間に合わなくて、急ぎ足で神社を歩かなきゃならない破目に陥るんだけど。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加