夜ぞふけにける

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「あー……。そういや2人で毎晩ガヤガヤとうるさかったわ」  うんざりと言った俺に、カラカラと笑う。 「あいつ、不器用だしね」 「あ、やっぱそう思います? のわりに、ヒトの不器用さには全然容赦ねーしッ」 「そうそう。結構 『怒りんぼ』 だし」 「そう! いきなりビックリするくらい怒るでしょ。周りが迷惑だっての!」  クスクスと、心底楽しそうに笑ってくれる。  自分の 『カノジョ』 の悪口を言われてるってのに、庇おうともせず会話を楽しんでいる。  ――『大物』 だ、この人は。  時折、そう思う。大袈裟じゃなく 『我儘』 な姉貴と付き合っていられる時点で、それは証明されている気がし た。  姉貴と同じ大学に通う潤一さんは、姉貴より2つ上の3回生だ。サークルが一緒だと聞いたが、どうやら姉貴 が潤一さん目当てに入ったようだった。 「右下左前、右下左前」  隣で、潤一さんが呪文のように唱える。  首を傾げて目を遣ると、又もや可笑しそうに微笑んだ潤一さんが、前を掛け合わせるような仕草をしてみせ る。 「コレ。間違えたら、死人になってしまうんだってさ。なんか大騒ぎだったよ」
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