夜ぞふけにける

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 その姉貴が、言い返さずに納得するなんて……。 「あれ? でも姉貴はなんで、潤一さんの事知ったんだろ?」  今の話だと、2人に直接の接点なんてない筈だ。 「それがねぇ」  そう言いながら、潤一さんはクスクスと笑っている。 「その後、俺も食堂出て廊下歩いてたら、沙耶花とバッタリ会ったんだ」 「へぇ」 「なんかね、廊下歩いてたらペチ、ペチって微かに鈍い音が聞こえてきてさ。何だろうって角を曲がったら、沙耶花が壁を拳で叩いてたんだ」  こうやって、と言いながら、シャドーボクシングのように拳を前へと突き出してみせる。 「全然納得してねーじゃんッ」  それどころか、スゲー怒ってんじゃん。 「そうなんだよ。でも俺、少し笑っちゃってね。振り返った沙耶花に、思わずハンカチ差し出したんだ」 「――えっ。泣いてたって事ですか?」  あの姉貴が? 「ううん。違うんだけど、あんな勢いで壁叩いてたら、血が出るんじゃないかと思って」 「そんな勢いよくッ?」
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