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「まあね。沙耶花も 『私、泣いてません』 って言ったんだけど、俺がハンカチ引っ込めなかったから、首を傾げながらも受け取って。その数日後に偶然、沙耶花が同じサークルに入って来たんだよね」
……あのう。偶然じゃないんですケド、それ。
「でも、ホントに泣かないなぁ。沙耶花って」
「でしょー? 俺も子供の頃から……って、1回だけなら、憶えてるのあるんですけど」
驚いた様子で潤一さんが俺を見る。
「やっぱり子供の頃は泣いたりしたんだ。それでも、1回だけなの?」
「ええ。もっと小さい頃は判んないですけど、俺が憶えてるのは1回だけなんです」
「逆に興味深いな、それ」
「俺、小学3年の時にどーしても欲しいシューズがあって、ずっと親にねだってたんですけど買ってもらえなく て……。そしたら誕生日に、姉が貯めてたお年玉で買ってくれて。俺もうスゲェ嬉しくて、その次の週の遠足ん時に履いて行こうって決めて。楽しみにしてたんですけどォ。……遠足の日が来る前に、突然姉がキレたんです」
「キレた?」
なんで? と訊いてくる。
そうだよな。これが普通の人の反応だよな?
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