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浴衣なのも気にせず大股でズンズン歩いて来たかと思うと、俺達の間に割って入った。
「フンッ」
そう言って俺から顔を逸らせ、潤一さんの腕を両手で抱えるようにして歩いて行く。
「ちょっ……」
引き留めようと伸ばした手が、虚しく宙で止まる。驚いた顔で姉貴を見つめる潤一さんの背中は、無情にも そのまま遠ざかっていった。
「……なんだあれ?」
闇に紛れてしまった背中を見つめ、俺同様取り残された祐志に呟く。
すると祐志は肩を竦めるようにして、「そりゃあ」と返してきた。
「弟が、顔赤くして自分の彼氏見つめてたらねぇ」
「なっ!」
それこそ、顔に熱を持つ。
「誤解だーッ」
叫んだ俺に、祐志がクスクスと笑う。そうして歩き出しながら、「どうだかなー」と揶揄うようにそっぽを向 いた。
「ホントだぞ! 潤一さんに確認してみろッ」
追いかけながら、背中を指差し言ってやる。「あー、はいはい」と等閑に頷く祐志に、「お前こそ、姉貴と何話してたんだよ」と腕を掴んだ。
2人で腕なんか組みやがって。
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