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「如何して、こんな・・・・・・」
何故、誰も気付いてくれないのか。
そして、何故、誰にも触れることが出来ないのか。
次々その場に差し掛かっては、まるで光流達が亡霊であるかの如くすり抜けていく通りすがりの生徒達に、驚きと共にすがる様な眼差しを向ける光流。
しかし、通り過ぎる人々は皆、一向に光流達に気付くことなく、その場を立ち去って行く。
恐らく、本当に三人の姿は彼らに一切見えていないのだろう。
光流がそう理解すると同時、楓が光流の腕を小さく引き、声を掛けてきた。
(もしかして、繋がったのか・・・?)
玲が、助けに来てくれるかもしれない。
いや、玲ならきっと助けてくれる。
楓のことも、華恵のことも、勿論自分のことも。
そうしたら、この恐ろしい存在ともオサラバだ。その心踊る可能性に、光流は我知らず小さな笑みを浮かべる。
しかし
「光流くん・・・ケータイ、繋がらないの。電波が、全然届いてこない」
「は・・・?いや、有り得ないだろ」
楓がもたらした、己の期待とは正反対の絶望的な知らせ。
彼女曰く、玲の携帯だけではなく、色々な・・・思い付く限りの人の連絡先にダイヤルしてみたらしいが、さっぱり繋がらないらしい。
それに加えて、楓はメールすら一切送信出来なくなっているという。
家族兼友人が伝えるその非常に悪い知らせに、みるみる光流の顔色は悪くなり、額には焦りからであろうか、脂汗が滲んでいく。
最早、これまでか。
携帯が使えない以上、光流達に外部に助けを呼ぶ術はない。
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