第11話 日常の果てに生まれる非日常

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そこまで思い出すと、光流は (何時も無邪気に振る舞っている様に見える徳永にも、意外と繊細な所があるんだなぁ) と一人妙に納得する。 (差し詰め、これが徳永にとっての安心毛布ってところか) 胸中でそう呟きながら、ぬいぐるみの前足にあたる部分をむんずと握る光流。 すると 『サワルナ』 吉乃のものとは明らかに違う、幼い少女の声が光流の頭に直接強く響く。 しかも、今回のは先程までの吉乃のものとはかなり違い、言葉から敵意が溢れだしている。 それと同時に 「・・・・・・っ??!!」 まるで金属片でガラスの板を滅茶苦茶に引っ掻いたかの様な耳障りで不愉快この上ない音が光流の脳内に、強く木霊する。 その余りの不快感と、耐えきれない音の奔流に、光流は思わずその場に膝をついた。 そうして、無駄だとは理解しているがそれでも堪らず両手で耳を塞ぐ。 瞬間、光流の手から落ちる犬のぬいぐるみ。 と、同時に 「消え、た・・・?」 光流を襲っていた謎の音も綺麗に聞こえなくなる。 と、屈んで徐にぬいぐるみに手を伸ばしながら、華恵が光流ににっこりと微笑み、告げた。
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