第11話 日常の果てに生まれる非日常

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「もう・・・エンガルを落とすなんて、酷い人ですねぇ。光流くんは」 その言葉とーー何より、その笑顔の奥の一切輝きのない、濁り切った澱の様な華恵の眼差しに、光流は一瞬で恐怖を覚える。 (何時もの徳永じゃねぇ・・・) 何時からこうだったのか。 或いは前からこうなのを隠していたのか。 何が切っ掛けで、如何してこうなったのか等今の光流に思い返す余裕はないが。 これだけは確実にわかる。 今の華恵は明らかに普通の、何時もの華恵ではない。 しかし、床に落ちた華恵の他の荷物を拾う為、華恵の後ろにいた楓はそんな華恵の豹変に一切気付かず 「ちょっと、光流くん、何してるの!私達友達なんだから、手伝ってあげなきゃ!」 そう言いながら、床に落ちた時についたのであろう、犬のぬいぐるみの埃やゴミを払ってやろうと手を伸ばす。 「駄目だっ!!」 思わず鋭くそう叫ぶと、楓の腕を掴み、ぬいぐるみに触れるのを阻止する光流。 「えっ?ちょっと、行きなり如何したの?」 状況が全く理解出来ていない楓は、若干不満そうな表情で光流を見上げて来る。
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