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そう、胸の中に希望の火を灯し始めた光流の目の前で、不意に華恵が肩を揺らし、くつくつと笑い始めた。
「・・・なんだ?」
その不気味な様相に、警戒からか光流は身を固くし、片腕を楓を護る様に伸ばす。
そして、怪しい動作や・・・縦しんば隙が生まれたならばその隙すらも、何一つ見逃したりしない様、光流はじっと華恵を見据えた。
するとーーーー
「な、んだ・・・あれ・・・?」
まるで海にうまれる渦潮の様な、漆黒の渦が華恵の頭の直ぐ上に生じ始めたではないか。
光流としてはかなり不本意ではあるが、しかし、先程までの華恵とのやり取りは、ともすればヤンデレな女子生徒とそれに絡まれた哀れな男子生徒とその彼女のラブコメ的会話に見えなくもない。
だが、流石に今のこの状況は非常事態だ。
廊下の真ん中に漆黒のブラックホール擬きが表れる等即校庭に避難になってもおかしくはない。
しかし
「嘘・・・どうして・・・?」
余りの驚きに楓が表情を強張らせる。
何故ならば
「皆、気付いてないのか・・・?」
そうーー周りの生徒達は三人がいる廊下を通っているにも関わらず、一向にブラックホールに見向きもせず、三人の横を素通りしていくのだ。
まるで、それが見えていないかの様に。
それどころか
「あ、ぶつかるっ・・・!」
「人が、すり抜けた・・・?嘘だろ・・・」
一体何時からこうなっていたのか。
三人が空気になったかの如く、その場を通る者達は皆、三人の体や床に置いたままになっている荷物をすり抜けていくのだ。
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