第11話 日常の果てに生まれる非日常

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また、自力で脱出しようにも、肝心の脱出口となる非常階段は廊下の真ん中に立つ華恵の遥か後方だ。 其処に辿り着くには如何にかして華恵の元を通り抜けなければならない。 だが、今の光流と楓には華恵の元を無事に通過する為の身を護る術等一切ない。 ちなみに、此所はかなり大きな学園なので本来非常階段は二つあり、もう一つは二人の直ぐ近くにあるが、老朽化で階段の床板に穴が空いてしまい現在修理中だ。 加えて、他の脱出口となりえる窓であるが、残念ながら此所は二階である。 クッションも何も無しに飛び降りて無傷で済むとは思えない。 また、他の可能性として昇降口があるが、やはり、其処に辿り着くには華恵の後ろにある正面階段を降りるのが一番の近道だが、やはり無傷で通り抜けられる可能性は皆無に等しいだろう。 完全に手詰まりだった。 すると、二人の表情に滲む絶望と焦りから、もう逃げられないのであろうと察したのか、華恵が動き出す。 悠然と、しかし、肉食獣が獲物を追い詰めていく様に、じわりじわりと二人との距離を詰めてくる。
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