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第2話 凶相の彼女と不幸な僕の狂躁曲(カプリッチォ)
ーー嗤った。
大輪の赤薔薇もかくやという程紅くーーまるで、心の臓が送り出す血液の、その最期の一滴を満遍なく塗り付けたかの様に真紅色付いたその艶やかな口唇を、ゆっくりと三日月の形に吊り上げ。
彼女ーー結城 葉麗は嗤ったのだ。
この、愚かにも、彼女の秘密を暴こうとーー下らない…そう、今思えば実に幼く下らない好奇心に突き動かされ、挙げ句開けては行けない地獄の扉を開けてしまったこの僕を。
彼女は、嗤ったのだーー。
ーー今、この真冬の夜空の中天より照らし出す…あの眩しく輝く満月よりも尚煌々と、眩く、それでいて妖しく、人の心の深淵を見透かすかの如く深い輝きを放つ、その黄金の双眸で。
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