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これはある意味光流にとっては宝くじに当たるよりかなりレアもレア、スーパーレアな出来事なのだ。
故に…だからこそ、光流は興味を覚えた。
その、彼女をこんなにも満たし、笑顔にさせている、理由であろう事柄に。
そう…それは、普段の彼女の鉄仮面ぶりを知る者達ならば仕方のない、ごくごく自然な欲求だったであろう。
少しだけなら、連いて行っても良いのでは。
ほんの少し、あとちょっとだけ。
彼女にバレるまで。
いや、もし、相手がいるのならば如何だろう。
そうだーー相手や、彼女に迷惑をかけなければ、このまま覗き見ても問題ないのではないか。
そうだ、それがいい。
別に誰に迷惑をかける訳でもない。
ただ、ちょっと覗き見たら帰るのだから。
だから、彼女にバレるまで。
何時しか彼は勝手に彼女に待ち人がいると思い込んで、彼女の後をバレない様に連いて歩き始めた。
言っておくが、光流は特段、彼女に好意を抱いている訳ではない。
寧ろ、何を言われても…何をされても、一ミリも表情を変えない彼女のことをかなり苦手に思っていた位だ。
そんな彼が今、好きでもない彼女のことを、まるで己が探偵であるかの如く尾行しているのはーーそう、 それは紛れもなく好奇心。
純粋な好奇心に突き動かされた結果なのだ。
他人ひとの秘密を覗いてみたいーーそんな、実に人間らしいエゴに溢れた黒い好奇心に。
ーーしかし、この時、彼は知らなかった。
『好奇心は猫を殺す』
正にこの言葉が示す通り、今彼が抱いている他愛もない好奇心が・・・己が死ぬ程の、いや、それどころか、彼の今までとこれからの人生全てを大きく変えてしまう程の出来事の切欠になるということを。
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