第3話 凶相の彼女と不幸な僕の狂躁曲(カプリッチォ)②

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第3話 凶相の彼女と不幸な僕の狂躁曲(カプリッチォ)②

 「貴方という人は……どうやら、つくづく運というモノに見放された方の様ですね」 本当に、御愁傷様で御座いますーー。 と、言外に言葉通りの憐憫の情とはまた違う、何か別の感情を含ませ、鈴振る様な声で彼女はそう告げた。 その別の感情とは…いや、それはわざわざ聞かなくとも、今目の前にいる彼女の顔を見れば一目瞭然だろう。 朱を刷いたのかと思う程鮮やかな紅緋色に染まった形の良い唇は先程から優雅に弧を描き、すっきりと整ったアーモンド型の、元は黒目がちであった涼やかな瞳は今や中空を飾る三日月の形に細められ、じっと僕を見詰めて来る。 その姿は…凜冽な冬の空に麗々と、月長石の様に輝くあの満月よりも美しく、しかし、それと同時に何者をも寄せ付けない程清冽だった。 (こいつって、こんなに綺麗だったっけ…?) これが所謂、女性のオンとオフと言うものなのだろうか。 頭の片隅でぼんやりとそんな事を考えながら、しかし、彼女のその凄絶な美貌から目を離せずにいると、不意に彼女が口を開いた。 「貴方はーー…」 瞬間、ゴゥッと、まるで猛獣の様な唸り声をあげながら、猛烈な勢いで吹き下してきた身を切る様に冷たいビル風が彼女の言葉を浚っていってしまう。 彼女との間に舞い降りる、一瞬の沈黙。 それが妙に心地悪く、加えて、先程の言葉の続きが気になったのもあり、意を決して僕は口を開いた。 「あの、結城さん。今、何かーー」 「貴方」 僕の言葉の終わりを待たず、彼女は玲瓏たる、よく通る美しい声で告げた。 「貴方ーー近い内に死にますよ」
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