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打ち合わせ、か。
しかも一人で。
あ、着いた。
タクシーを降りてぐるっと見渡す。
ここでかよ。
またこっそりため息。
吹き抜けの明るい、明る過ぎるくらいのコーヒーハウス。
綺麗な大理石のテーブルに乗るボーンチャイナのティーセット。
琥珀色のダージリン。
ここって、都内でもイチニを争う老舗のホテルだよねえ。
ここのデザートバイキングなんか、しょっちゅうテレビでやってるもんね。
商用でも結構使われるんだな、ここ。
あちこちのテーブルで打ち合わせしてる。
ぼっちの俺、居心地悪い。
もう待ち合わせの時間から30分以上経ってる。
社長ってみんなこんなんかな。
忙しいのか、時間にルーズなのか。
それにしても上品な客ばっかりだ。
派手では無いけど結構高いブランドの服来てたり、物腰が優雅だったり。
何か庶民の俺とはカクの違いを感じる。
ほら、あそこで商談してるビジネスマンも。
ピンと伸びた姿勢にパリッとした白いシャツが、ちょっとくたっととしてきた濃紺のスーツを、かえってしなやかでこなれた生地に見せかけてる。中々、上級者の着こなし、って、あれ?
タモツ、だ。
何?
俺の視線の気づいたの?
目。目あっちゃった。
あ、どうしよう。うろたえ
「お待たせ、遅くなって御免ねえ!」
おばさん!この場にそぐわない黄色い声止めて。
しょうがない。
「お待ちしてました。いつもお世話になっております、水野社長」
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