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よし、言えた。
教えてもらった通りの文言。
「私にも追加で。後スコーン」
ボーイに事もなげに伝え、俺の前に優雅に座るこの人は。
「この度は、新シリーズの専属モデルに起用いただきまして、有難うございます。社長共々大変感謝しております」
今日は黒か。
テーブルから少し離して椅子を置き足を組む。
膝丈のフレアスカートが足を組んだせいで、少しめくれて折角のこのブランド特有の優雅なシルエットを崩しちゃってる。
足を揃えて、後ろに引くと、スッゴく綺麗なライン見せるんだよな、このスカートのパターンだと。
一応モデルだからね、こだわりはあるんだ、一応は。
「そんなに私の足、気になる?」
いや別に。
ガラガラとワゴンを引っ張って来るウェイター。
ポット毎入れ替えて追加で置かれたティーセット。
スコーンを乗せたプレートにこんもりと生クリームとベリー系の濃い赤のジャムがガラスの器に入ってる。
胸やけしてきた。
砂時計が落ちるまで後もう少し。
「詳しい打ち合わせは部屋でしましょう。まずは腹ごしらえ」
スコーンを半分に割りながら、真っ赤な唇の端がひきあげる。
俺、文字通り食われる訳ね。
べっとりと生クリームとジャム塗りたくられたスコーン。
それをがっつり召し上がった口で、美味しく、食べられちゃう訳ね。
どう見ても三十代は終わっているこの人に。
商談終わったのか。
視界の裾にタモツのスーツが引っ掛かる。
チラッとだけ見てもいいかな。
チラッと………バッチリ目があっちゃったよ。
眼鏡越しにだけど。
相変わらず感情は読めない。
分かったのは、
やっぱりハンターの目してるってことだな。
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