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ホテル出る前に事務所に電話したら、社長にもう今日は帰っていいって言われた。
ホテル出て、タクシーに乗り込んで。
やっぱ事務所行こうかな。
社長、逆に俺仕事したいです。
なんか、真っ白になりたい。
左手首に、目をやるともう10時。
「専属モデルなんだからいつでもつけてなさい」
ってくれた新しいブランドの時計。
若者向けだけど、すっげーダークなデザインで、結構いい。大事に10年位使うと、いい具合に傷なんかもついて、却ってぐっと来る、みたいな。
10年すると俺も三十代。
その頃にはタモツみたいになれるのかな。
何もかも達観した、鉄面皮に。
無性にタモツに会いたい。
バーに、行こう。
きっと今日も来る。
もうハタチだもん。
堂々と入れるし。
ああ、そうだ。
今日俺、誕生日。
一人っきりなんて。
寂しい。
「この住所まで」
店の名刺を見せると静かに走り出すタクシー。
ドアを開けると。
いた。
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