パン食い競争

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「あなた達の意思は、私が受け継ぐ」  闘志を燃やす田中は、パン食い競争へと出陣した。  スタートすると同時に、同僚の後ろに張り付き、さらに角度も計算して走る。 「あいつ……山田と鈴木の技を……」  佐藤は嬉しさのあまり、思わず笑みが零れた。  そして、田中は吊るされたパンへと無事に到着する。  すると、玉入れで息絶えたはずの山田が、佐藤に向かって声を出した。 「佐藤リーダー……このままでは駄目だ……」 「山田、一体どうしたんだ?」  続いて鈴木も口を開く。 「田中は重大なミスに気付いていない……あいつの小さい口では……パンを咥えるのに不利なんだ……」 「!!?」  田中を確認すると、確かにパンを咥えられず苦戦していた。  ……  ……  その姿は、何故かいやらしく見える。  三人は声を出さず静かに見守った。  結果は最下位。  ゴールで肩を落とす田中に、チーム・メガネは駆け寄った。 「佐藤リーダー、申し訳御座いません」  足を崩して座り込む姿が、なんとも艶めかしい。 「山田……鈴木……あなた達の意思を……継げなかったわ……」  涙を流す姿も色っぽい。  メガネに涙は似合わない……佐藤達は心を一つにして、前言を撤回した。
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