第一章 失踪事件

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* 残像 「さ、さ、さ、さゆにゃーん!」  ライブハウスに野太い男の声が唱和する。  天井から落ちるライトがステージ上で踊る少女を照らしていた。フリルのついたミニスカート、白いニーソックスに包まれた細い足、光に反射してキラキラ光るラメ入り衣装、頭にのせた大きな白いリボンがダンスに合わせて揺れる。 「世界でいちばんアイシテル! さゆにゃーん」  曲の合間に入ってくるファンの声(ほとんど男)。腹の底にズシンズシンと響くリズム、踊りの振りとシンクロして波打つ七色のペンライト、ライブハウス内をカラフルに染める照明。  太田俊輔は、初めて見る地下アイドルのライブに圧倒されていた。
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