第一章 失踪事件

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「ああ? なに言ってんの、おまえ」  茶髪の方が凄んでくるが、そっちは取り合わない。  こいつは本当にチンピラかもしれない。しかし、もう一人は違う。昔はチンピラだったかもしれないが、今は少なくとも正業に就いている。髪を金髪にしない(できないのは)それを手放したくないからだ。  なぜか? 守るべきものがあるからだ。妻、子供、(結婚を考えてる)彼女? 大方そんなところか。昔のチンピラ仲間に誘われて、ストをしてますってところか。 「彼女さん、泣きますよ。淫行条例で警察に捕まったりしたら」  金髪が言葉に詰まっているのは、半ば図星だからだ。 「おい、調子のってんじゃねえぞ、〝お兄ちゃん〟」  もはやチンピラの本性を隠そうとせず、茶髪が煙草くさい息を吐きかけてくる。
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