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「うるせえよ、このオタク野郎」
茶髪にのど元を締め上げられる。喉が詰まる。息が苦しい。歯を食いしばる。しかし、そんなときでも、俊輔は金髪だけを睨みつける。おまえだ。僕はお前に語りかけているんだぞ、と無言で伝える。
そのときだった。
ピッピーと笛の音がした。
「あー、はい、そこまで、そこまでー」
十メートルほど向こう、三十代半ばぐらいの男が手に笛を持っている。
「どしたの? 君たち」
眼鏡をかけた男がにこにこと笑いながら近づいてくる。ベージュのスラックスに濃い茶色のセーター。紺のダウンジャケットを着て、赤いデイパックを片方の肩にひっかけている。右の二の腕に、黄色い蛍光色の腕章を巻いている。
「何かトラブル?」
笑顔を顔に貼り付かせたまま訊いてくる。笑うと目がつぶれて見えなくなる。
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