第一章 失踪事件

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 それから俊輔たちに向き直った。 「怪我ない?」 「あ、僕は大丈夫です」  背中のメイド娘に振り返る。おびえているが、怪我はなさそうだ。 「ほんと、ああいう輩(やから)が増えたよねえー、池袋も」  男があきれたようにつぶやく。 「自警団の方なんですか?」 「僕? あー、違う違う。普通の一般人。ただの通りすがりのリーマン。ほんとは素通りしようかと思ったんだけど、君が勇気あるからさー。つい馴れないことしちゃった」  俊輔は意外そうな顔をする。あの警笛と腕の腕章は何なのだ?  はは、と笑って、自称リーマンが首にかけた笛を指でつまむ。 「これはフットサルの審判用。フットサル帰りなんだよ。あっちのビルの上にコートがあってさ」  遠くのビルの屋上を指さす。
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