第一章 失踪事件

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 笛と腕章をデイパックのポケットにしまう。 「じゃねー。バイバイー」  手を頭の上でぷらぷらさせて駅の方へ去っていく。  その場に残された俊輔とメイド娘の間には、なんとなく気まずい沈黙が落ちた。出会いが出会いだ。これから何をしゃべればいいのか。 「あの、さっきは巻き込んじゃってすいません……」  もじもじしながら、メイド娘が言った。 「あ、いや、いいんですよ。とにかく、何もなくて良かったです」  照れたように俊輔が頭をかく。  メイド服の胸元にある深い谷間が目に入る。急に巨乳がキタ(いわゆるQKK)。チャラリーマンの「カップルになっちゃいなよ」の言葉が耳の奥で響く。股間がじんわりと熱を帯びる。  が、哀しむべきは童貞(DT)。ゴールの前を急にボールが横切ってもどうしていいのかわからない。
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