第一章 失踪事件

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 若い警官が胸元の無線で本部に報告をしている間、伊藤がいかつい顔の警官の首に腕を回し、顔をぐっと引き寄せた。 「この前の合コンどうだった? あの子とつなげてる?」 「あ、はい……おかげさまで」  恐縮したように短い首を縮こまらせる。 「またセッティングするからさ」 「はいっ、ありがとうございます!」  この警官――勝村巡査部長は彼女いない歴=年齢だった。地方なら安定した公務員としてそこそこモテる警官だが、都市部では収入の良い男が他にもいるので相手にされない。だから合コンを餌に手なづけていた。 「女は数だよ。今、付き合ってる女がオンリーワンだなんて思いこんじゃだめだよ。オンリーワン病になるな。君に何度も教えたよね?」 「はいっ、警部補の教えはしっかり守ってます」
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