第一章 失踪事件

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 次に伊藤は若い警官の方に顔を向けた。 「君は……たしか足達くん。刑事志望だったよね」 「はい、そうですっ」  まじめで実直そうな警官が直立不動で答える。 「何でも相談にのるよ。気軽に声かけてね」  あの、と若い警官が遠慮がちに訊いてくる。 「例の女子高生がらみの件、事件性はありそうですか?」  ここ一年ほど、池袋を中心に、沿線に住む女子高生が失踪していた。家庭に問題がある少女も多く、家出だと思われていた。家族から失踪届が出ている例もあるが、警察も本腰を入れていない。 「うーん、難しいかな。なんせ何も出てないからねえ。いなくなってるのも、家庭にに事情があるコばかりだしねえ。どうかしたの?」
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