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「まあ、二人ともまた今度、飲もうよ」
手でお猪口の形を作り、「じゃ、またねー」と頭の上でぷらぷらと手を振って去っていく。
「……なんかちゃらい人ですね」
背中を見送っていた若い警官がつぶやいた。
「そうか、おまえはウチに来たばかりだったな」
いかつい顔の警官が続ける。
「池袋署で落としの技術に関しちゃ、あのひとの右に出る者はいない。伊藤の尋問といえば、若い連中の間で教科書にもなってるぐらいだ。あの人の手にかかって落とせない星はいない。取調室はあの人の独壇場。尋問のプロだよ」
二人の警官の視線の先には、鼻歌でジングルベルを口ずさみながら、通り過ぎる女の子に声をかける刑事の姿があった。ステップを踏むような軽やかな足取りには〝尋問のプロ〟を思わせる匂いは微塵もなかった。
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