第五章 決着の刻

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「言ったよ。叔母さんのお葬式の帰りに。世界には悪意しかないって」  ちょっとむきになって梢が反論する。 「あたし、思うんだ。本当にそうかもしれないって。あいつの記憶が薄らいできたときに、またこういう事件が起きるのかもしれないって。でも……そうだとしても、たとえ、世界には悪意しかないのだとしても、私は生きていきたい」  自分に言い聞かせるように梢は前を向いた。  俊輔は空を見上げた。透き通るような冬の青空が広がっている。  イブの夜、池上さんが入院している病院に行く途中、梢は言った。 「あたし、生きてていいのかな?」  目の前で多く人が死んだ。友達も大けがをした。自分だけが生き残ってしまったという罪悪感を抱いていた。
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