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「霧島が追試なんて珍しいな……つかどこ間違ったんだよ」
「……逆にいうけど、お前が追試じゃないなんて珍しいな」
「ギリだけどな」
そう言って笑う好青年-田端 俊介-は俺に自慢げに自分の解答用紙を目の前に突きつけてくる。赤文字で書かれているのは32という数字。
だが俺にとっては羨ましい数字である。
羨ましすぎて思わず長い溜息が出た。
「でも今回の中間、前よりかは簡単じゃなかったか?ほんと、どこ間違ったんだよ」
確かに今回の中間は定期テストよりかは簡単であった。選択問題が多かったし○×問題も出た。学生にとってはサービス問題だらけだったのだ。他のクラスの友人に聞いても皆いい点数だったという話を聞いていた俺にとって今日のテストの点数はまさに青天の霹靂だったのである。明らかに油断していたと言っていい。
「あ~、俺の答案見る?」
「「見る見る」」
「おい長野。お前までちゃっかり混ざってんじゃねぇ」
先ほど返されたテスト用紙を二人に渡す。
二人はじっくり霧島の答案を眺めている途中である一点だけを見つめた。
「これ、かなり惜しいことしてんじゃん」
「……だな」
同意するようにして長野が頷く。
二人が見つめているのは29点という中途半端な点数である事の元凶、普通ならあまりしないであろう減点1点の対象である漢字ミス。
だが霧島ならではのミスにこれは仕方ないのでは……、とも思ってしまった。
「お前らがどの事を言ってるのか何となく分かるよ」
明らかに苦笑いの二人から俺はテスト用紙を取り上げて不機嫌そうに赤ペンで三角がつけられているところを睨んだ。
"星霧戦争"
正しくは"星霜戦争"である。
自分でも何故こんな漢字ミスをしてしまったのか恥ずかしいくらいだ。テスト中は至って寝不足でもなかったし別段普通だった。自分の名字にこんな弊害がついてくるとは予想もしていなかった俺は再び溜息をついて項垂れる。見直しをちゃんとしておけば良かったと後悔した。
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