遠距離(仮)の日々4

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「…むかしのことは忘れました」  穏やかに笑って許した祐樹に、東雲は切なげな表情で頭を下げた。 「ありがとう、祐樹。俺に家庭や子供をくれて。きみが譲ってくれた幸せだと思っている」 「…それは違います。あなたが自分で作りあげた幸せです」  それでも今ならあの時の東雲の気持ちもわかる。  とても好きで信頼している恋人から、見合いして結婚したほうがいいから別れようなどと言いだされたら、どんな心境になるか。まだ心変わりしたから別れてほしいと言われたほうがましだろう。  そんな話し合いを経て別れたけれど、でも7年が経ってこうやってまた会える日を持てたことに、祐樹は素直に感謝した。 「なんだか安心しました」  祐樹の言葉に、東雲は苦笑した。 「それはこっちの台詞だよ。…訊いてもいい?」  東雲はいたずらっぽい顔になって、笑いながら問いかけた。 「恋人がいるんでしょ?」
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