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いますぐ孝弘に会いたいな。
店のまえで東雲と別れて頭に浮かんだのは、そんなことだった。
もしも、いま、孝弘にとてもいい見合い話があるから彼と別れてやってくれと孝弘の親友(ってぞぞむか?)に頭を下げられたら、じぶんは一体どうするだろう?
ほろよいの祐樹はその想像に、ふっと笑う。笑えるじぶんがうれしかった。
答えはもうわかっていた。
絶対に何があっても別れない、だ。
かつて東雲をとても好きだった。
彼の将来のために別れてもいいと思うくらいに。じぶんのいない彼の幸せを祈るくらいに。
別れと引き換えに彼に家庭や子供をあげたいと願うくらいに。
いまは孝弘を好きになった。
彼と将来を過ごすと決めたから、絶対に別れないと決意するほどに。彼の幸せはじぶんが傍にいてあげることだと思えるほどに。大切にしてだれにも譲れないと確信するほどに。
夜空を照らす月を眺めながら、祐樹は足取りかるく家に向かう。出発まであと5日。
月曜日には孝弘に会えるのだ。
完
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