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間違いねえ。これだけ時間が経っても忘れはしねえ。
ちい姉・・・千歳姉が不幸に巻き込まれる全ての原因は、この自分が作ったのだ。
あの古い神社で、隠し鬼で捕まってくれたちい姉。あの時のことがきっかけで、ちい姉は・・・
「済まねえ、済まねえ・・ちい姉・・・おら・・おらずっと謝りたくてよぉ・・」
涙声の源蔵の頭に、そっと小さな手が置かれる感触がした。
「泣くでねえ、源蔵・・・こんな大きゅうなって・・・」
嗚咽を漏らす源蔵の頭を撫でながら、ちい姉は続ける。
「おまんのせいじゃねえ・・これも巡り合わせじゃけぇ・・ほら、倅を連れて帰らな・・」
倅?
はっとして顔をあげた先には既にちい姉の姿はなく、代わりに杉の根元で眠りこける源作の姿があった。
源蔵は源作に走り寄り、その体を揺さぶる。
「源作!! 起きんか、源作!!」
「ん・・あれ・・?・・親父・・?」
「こん・・馬鹿息子が!!」
涙を流しながらも、げんこつを下ろす。
源作はいてっ、と声を上げたが、源蔵の帰るぞという言葉に今回は素直に従った。
源作は父親の後を追いながら山を見上げる。
いつもの、見慣れた筈の山々。しかし今夜は、どこか違う世界と繋がっている様な気がする。
「源作、急がんか」
源蔵に促され、源作は再び山道を降り始めた。
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