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トン、トン、トン 自身番の戸を叩く音がする。 「いや、驚いたのなんの。大八車に遺体を横付けして、朱に染まった娘が」 『人を刺してしまいました。』 へらへら笑って、真冬の夜更け、自身番の前に立っている。 「だからと言って、監察を忘れた訳ではないのだが、何せ娘から包丁を取り上げるのに手間取ってな…。」 異様な光景、娘は自分がした事を説明するように、遺体の腹に出刃を… 「遺体ってのは…。女の方ですよね?」 念を推すように、女の遺体を改める。 「自身番に女を入れようとしたら、気を失っていた男が悲鳴をあげてな…いや、肝をひやしたぞ!」 鋭い出刃が遺体の腹に潜り込んでいる。 自身番の中で娘が暴れた、拘束に手間取った間、遺体の横で気を失っていた男が居た場所に、男の代わりと白骨が置かれていた。 「覚悟の心中で、いいじゃないでしょうか…。」 娘の異様さに、惑わされては居なかった筈。 「この遺体にかんしてはなそうだがな…。何かを見落として居るような気がして、遺体を杉田先生に観察して欲しいと思ったのよ…。」 鋭いのも、考えものだが…気付いてくれたお陰様で… 男性は正気だったと確認出来た。
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