瞳の奥の真実

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翌日、僕と舞は徹夜明けで疲れていた。 僕は、舞の残業のことが気になって、舞の上司の幸田さんに何とか話をしようと機会を伺っていた。 幸田さんが席を立った時、僕も席を立って幸田さんの後を追った。 幸田さんがお手洗いに入ったので、僕も続けて入って幸田さんの後ろから声をかけた。 「失礼ですが、櫻田さんの上司の幸田さんですか?」 幸田さんは振り向きながら、 「はい、そうですが?  何か?」 と答えた。 僕は、幸田さんが悪い人のようには見えなかった。 「私は、櫻田さんの同期で、若林と申します。  昨日、櫻田さんが1人で残業していたようで、気になりました。」 すると幸田さんが、 「女性1人だけに仕事を押し付けるのは、ダメな上司だよね!  わかっているんだけれど、昨日は誰も都合がつかなくてね!」 と申し訳なさそうに答えた。 「私でよろしければ、声をかけてください。  グループが違うので雑用しかできないと思いますが、何でもお手伝いします。」 僕が発言すると幸田さんが、 「それは、ありがたい。  ぜひ、お願いします。」 と答えてくれた。 「それよりも、若林君は、なぜ色の入ったメガネをかけているの?」 幸田さんには、正直に答えてもいいと判断した僕は、 「実は、眼球が赤い色をしていて、周りの人から気持ち悪がられるんです!」 と答えて、僕はメガネを取って、幸田さんの瞳を見つめた。 僕の目を見た幸田さんは、少しビックリしたような表情をしていたけれども、 「そうか、悪いこと聞いちゃったね!  ごめんなさいね!」 と謝ってくれた。 「いえ、いいんですよ!」 と答えながら、メガネをかけ直した僕は、幸田さんが嘘をついていないという確信を持った。 それは幸田さんの瞳からは、嘘が見当たらなかったからだ。 僕は、舞の上司の幸田さんは、人の良さそうな感じの人物で、なんとなく安心した。
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