Royal Fraternity

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澄まし顔でお茶と菓子を用意するヘルマンを横目に、ファウストもさすがにそろそろ逃げ切れない……もとい、向き合わなければならないと覚悟をする。 ファウストが必死に逃避していた現実は二つ、いや、二組の身内についてだった。 一組は最も敬愛すべき人であるのと同時に最も恐ろしい存在でもある叔母のレスターと、最も頼りにすべき山守であるのと同時に最も関わりたくない神秘の狼神でもあるカミ。 王である自分が唯一相手にしようがないと感じる畏怖なる神様を避けまくってきたせいで、つい先日、レスターの妊娠が発覚するまで一人と一匹の関係に少しも気付かなかったのだ。 以前噂になった好青年にも一切なびかなかった叔母なので、これはもう、一生独身なのではと気掛かりだった事を思えば喜ばしい限りなのだが、相手が大狼となると心情は複雑極まりない。 一体、あんな俺様調子のどこが良かったのだろう。 ともかく、そんな衝撃と混乱の真っ只中で、ファウストは更なるもう一組のカップル成立を知ってしまった。 その時には腹の底から怒りが湧いたものだったが、時間が経つと共にしおしおと沈んだ気分で悲しさや切なさが込み上げてきてしようがない。 ファウストに衝撃を与えたもう一組は、至上最高に麗しく可憐で清廉な愛妹の巫女姫ティアラと、至上最低にこまっしゃくれのへたれ野郎な護衛兼虫除けのヨシュアだ。 そう、あくまで護衛兼虫除けとして側に置いていたのに、ミイラ取りがミイラになる例の如く、女嫌いの虫除けが虫になってしまうのだから世の中わからないものである。
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